共働き世帯年収1,200万円で8,000万円の家を購入するときの注意点<前編>

2023年10月20日
共働き世帯年収1,200万円で8,000万円の家を購入するときの注意点
世帯年収が1,200万円の家庭は一般的には高所得世帯に分類されますが、それでもマイホームの購入は大きな出費に変わりありません。

もし8,000万円ほどの住宅を購入するとしたら、どんなことに注意すべきでしょうか。

今回は共働きで世帯年収1,200万円ほどの家庭が、8,000万円の住宅を購入する際に考えておきたいポイントを前後編に分けて解説します。

高所得といえども甘い計画で住宅を購入してしまっては、その後家計を圧迫しかねません。

前編の本記事では、住宅ローンの組み方・返済についてしっかりみていきましょう。

月々いくら返済できるのか見極める

月々いくら返済できるのか見極める
住宅ローンを組む際に大切なのは「いくら借りられるか」ではなく「いくらなら全部返済できるか」です。

住宅ローンは借金の一種。

大きな金額を長きにわたって返済していきますから、たとえ低い金利でも総額でみると利息だけで数百万円にのぼります。

また、退職後までに完済できない場合はその後どのようにして払うかも考える必要があります。

まずは月々の返済額について3つのステップで考えてみましょう。

1. 返済額の目安を知る

住宅ローンの返済額は一般的に年収の25%以内が目安とされています。

ただし、実際には15%〜20%程度での利用者がもっとも多い状況です。(住宅金融支援機構2022年4月調査)

ここでいう「年収」は源泉徴収票に書かれている年収ではなく、手取り年収で考えましょう。

住宅ローンを契約するときには源泉徴収票の提出が求められますが、源泉徴収票に書かれているのは税金と所得税が引かれる前の金額です。

返済額は実際に手元に入る収入額を基準に考えてくださいね。

2. 手取り収入を調べる

世帯年収1,200万円といっても、子ども(被扶養者)がいるかどうか、夫と妻の給料の割合によって手取りの収入は変わってきます。

目安として、40歳未満で子どもが2人いる世帯年収1,200万円家庭の手取り収入はおおよそ950万円程度。

扶養人数が0〜1人の場合は額面年収のおよそ75%〜80%扶養人数が2人以上になると80%〜85%程度が手取り収入となります。

3. 現在の生活費を把握する

収入を把握したら、現在の生活費を洗い出しましょう。

具体的には以下の費用があげられます。
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家賃(駐車場代を含む)
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食費
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水道光熱費
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通信費
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日用品費
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趣味・娯楽費
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保険料
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教育費
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医療費
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その他
なお世帯収入1,200万円の4人家族・賃貸住まいの場合、毎月の生活費は平均45万円ほどです。(総務省統計局 2022年家計調査)

まず現在の家賃分を住宅ローンの返済に充てるとして、+αでどれだけ返済額を捻出できそうか考えてみてください。

いくら借りられるか見積もる

いくら借りられるか見積もる
毎月いくら返済できそうか把握したら、ここからは総額でいくらのローンを組めそうか考えます。

先述した月々の返済額のほか、返済期間、頭金と諸費用を見積もっておきましょう。

1. 月々の返済額

月々返済できる額は先ほど3つの手順で把握しましたね。ここでもう一度、計算した数字を見つめ直してみてください。

30年、35年にわたって払い続けられそうですか?

夫婦のどちらかが離職するリスクや、子どもが小さい場合は今後の教育費まで考慮した金額でしょうか。

余裕を持った金額で見積もってみてくださいね。

2. 返済期間

住宅ローンの返済期間は、一般的には最長で35年です。

返済期間が短いほどトータルで支払う利息は少なくなりますが、かわりに月々の返済額はそのぶん増えます。

60歳以降は収入の減少が予測されるため、できれば60歳までに返済を終えておきたいところです。

月々の返済額とのバランスを考えて設定してみてくださいね。

3. 準備できる頭金(諸費用)

ここではまだ金利分を考慮していませんが、月々の返済額×返済期間で大まかな総額が見えてきました。

次に考えたいのが頭金とローン以外にかかる諸費用です。

住宅購入にはローンを組む際の事務手数料や各種税金などが別途必要であり、新築物件の場合は物件価格の3%〜7%が目安です。

8,000万円の物件だと240万円〜560万円ほどになります。

また頭金を多く準備できれば住宅ローンの返済負担も軽減できるため、諸費用の支払い分を含め、今使える貯金(現金)も計算してみてください。

ただし、子育て世代の方は頭金を入れすぎて教育費が足りなくなってしまったら元も子もありません。

少し長い目線で考える必要があります。

借り方を考える

借り方を考える
夫婦で1本のローンにするのか2本に分けるのか、変動金利か固定金利か、また返済方法も検討していきます。

ここまで把握できれば金融機関等のWebサイトで借入額や月々の返済額等を簡単にシミュレーションできるため、きちんと整理しておきましょう。

1. 住宅ローンの組み方

共働き夫婦が住宅ローンを組む場合、大きく2種類の選択肢が考えられます。

夫と妻でそれぞれローンを組む「ペアローン」と、
夫婦の収入を合算して1本のローンを組む「収入合算(連帯債務型)」と「収入合算(連帯保証型)」による方法です。
 ・ ペアローン
夫と妻がそれぞれローンを組み、ひとつの物件に2本のローン契約をおこないます。

団体信用生命保険にもそれぞれ加入し、住宅ローン控除もそれぞれで適用できます。

ただし契約にかかる手数料も2人分発生する点、またどちらかに万が一のことがあった場合でも、団体信用生命保険による債務免除は1人分のみの点には注意しましょう。

 ・ 収入合算(連帯債務)
どちらかの収入をもう一方の収入に合算して1本のローンを組む方法です。

たとえば夫の収入に妻の収入を合算する場合、夫が申込者(主債務者)、妻は連帯保証人となります。

主債務者が団体信用生命保険に加入し、主債務者に万が一のことが起きた際にはすべての残債が返済されます。

連帯債務者が万が一の時にもすべての残債が返済される、団体信用生命保険にも加入できますが、保険料相当額が別途かかります。

また、連帯債務者も持分割合に応じて住宅ローン減税が受けられます。

 ・ 収入合算(連帯保証)
どちらかの収入をもう一方の収入に合算して1本のローンを組む方法です。

たとえば夫の収入に妻の収入を合算する場合、夫が申込者(主債務者)、妻は連帯保証人となります。

主債務者が団体信用生命保険に加入し、主債務者に万が一のことが起きた際にはすべての残債が返済されます。

ただし通常、連帯保証人は団体信用生命保険に加入できません。また、連帯保証人は住宅ローン減税を受けることはできません。

2.金利タイプ

住宅ローンの金利には、固定金利型・固定金利期間選択型・変動金利型の3種類があります。

それぞれ利率が異なるため、選ぶタイプによって支払総額も変わってきます。

固定金利型
固定金利型
変動で返す?固定で返す?住宅ローンの金利タイプ | D.お金を借りる | 一般社団法人 全国銀行協会

契約時から返済終了まで金利が変わりません

毎月の返済額も変動がなく返済計画が立てやすい点がメリットである一方、変動金利型にくらべると金利設定は高めです。

固定金利期間選択型
固定金利期間選択型
変動で返す?固定で返す?住宅ローンの金利タイプ | D.お金を借りる | 一般社団法人 全国銀行協会

一定期間、金利が固定されるタイプです。

契約時に3年、5年など固定金利の期間を選択し、固定期間終了後はまた次の固定期間を選択するか、変動金利に移行するかを選びます。

固定期間が長いほど適用される金利は高くなる傾向にあります。

また、固定金利期間が終わった後は当初から変動を借りるよりも、金利が高くなる傾向があります。

変動金利型
変動金利型
変動で返す?固定で返す?住宅ローンの金利タイプ | D.お金を借りる | 一般社団法人 全国銀行協会

経済情勢等に応じて半年に1度、金利が見直されるタイプです。

金利の変更はすぐに返済額に反映されるわけではなく、調整は5年に1度です。

固定金利型にくらべて金利は低いものの、金利の上昇により月々の返済額が増えるおそれがあります。

なお2022年4月時点では住宅ローン契約者のうち73.9%が変動金利型を選んでいます。(住宅金融支援機構 2022年4月調査)

ただし、これは経験上ですが、変動を選んだ理由に確固たる理由がある場合は少なく、不動産屋や銀行に勧められたからという場合が多いように思われます。

3.返済方法

ローンの返済方法にも2種類あります。

毎月の返済額が一定である「元利均等返済」と、毎月の返済額が徐々に減っていく「元金均等返済」です。

元利均等返済
元利均等返済方式のイメージ図
変動金利の行方はどうなる? 変動金利型の住宅ローンの特徴や仕組みを解説。借入時だけではないサービスにも注目 | 住宅ローンコラム | 三井住友信託銀行

元金と利息をあわせた毎月の返済額が一定で、返済計画や家計管理をしやすい返済方法です。

次で紹介する元金均等返済にくらべて支払う利息の総額は高くなってしまいますが、現在はこちらの元利均等返済が主流です。

元金均等返済
元金均等返済方式のイメージ図
変動金利の行方はどうなる? 変動金利型の住宅ローンの特徴や仕組みを解説。借入時だけではないサービスにも注目 | 住宅ローンコラム | 三井住友信託銀行

元金部分が一定で、利息部分が残債に応じて減っていくタイプです。

当初の返済額は多いものの、利息が減っていくため徐々に返済額も減っていきます

利息の総支払額は元利均等返済より少ないのですが、初期の負担が大きく、また取り扱いのある金融機関が限られています。

住宅ローンは今と将来を見据えて契約しよう

前編の本記事では、住宅ローンを組む際の基本的な考え方について解説しました。

住宅ローンの返済は長きにわたります。今は余裕があったとしても、計画が甘ければ先々家計を圧迫しかねません。

もしかしたら「8,000万円のマイホームは厳しいかもしれない」と気づいた人もいらっしゃるかもしれませんね。

諦める前に、一度FPに相談してみませんか。
当事務所では相談者さまができるだけ希望を叶えられるように家計プランをご提案いたします。

後編は住宅ローンの基本をふまえたうえで、とくに掘り下げて考えておきたいポイントを解説していきます。

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