転職時の退職金は運用すべき?もうどうするか迷わない管理方法を解説

2024年2月1日
転職時の退職金は運用すべき?管理方法を解説
転職があたり前の時代となった今、キャリアアップのために複数回の転職を経験する方も少なくありません。
転職時には受け取れる退職金をどうするか悩む方が多くみられます。とくに子育て中で今後教育費の負担がのしかかってくる方には、退職金を貯めておくべきか、運用すべきか、悩ましい問題でしょう。

本記事では転職者がよく考えておきたい退職金(確定給付企業年金・企業型確定拠出年金)の管理方法について解説します。

転職者の退職金受け取りには弱みがある

転職者の退職金受け取りには弱みがある
転職者でも退職金を受け取れますが、入社から定年まで同じ会社で勤め上げた人とくらべると転職者が受け取れる退職金は少ない傾向にある点がネックです。退職金のしくみを簡単に説明します。

退職金制度は長く勤めた人が優遇される

厚生労働省によれば正規雇用労働者の内転職経験者の割合は男性が51.2%、女性は61.2%と、男女ともにもはや半数以上が転職を経験する時代です。

転職はもう社会的にあたり前となりつつありますが、なぜ転職者は退職金の面において不利になってしまうのでしょうか。
それは、退職金制度はいまだに長期勤続を優遇する制度であるためです。

退職金額の設定には、各社員の、会社への貢献度が反映されます。たとえば高い役職の人が多く退職金をもらえることは納得できるでしょう。

ほか、勤続年数がポイントとなるケースも多くみられます。退職金は自社で長く働いてくれた社員への労いの気持ちで渡すイメージが根強く、長期勤続が優遇される制度に結びつくわけです。

勤続20年未満は退職金支給額の伸び率が低い

さらに退職金は勤続20年以降の伸び率が高く設定される傾向にあります。
たとえば22歳で入社、38年勤め上げて60歳で退職するモデルの場合、退職金は勤続1年ごとに1/38ずつ増えていくわけではありません。

下のグラフのように勤続20年までは伸び率が低く、40歳前後から支給額がうんと増加するケースが一般的です。
グラフ, 折れ線グラフ

転職者はとくに退職金の使い道をよく考えるべき

退職金は社員の入社から退職までにわたり会社が積み立ててくれるお金です。しかし転職をすればこの入社からの積み立てがリセットされてしまいます。
とくに自己都合の短期離職の場合は減額幅が大きくなりがちです。

ですから同じ22歳から60歳まで38年間働く場合でも、同じ会社に勤めつづけた人と、
5年10年スパンで複数回転職をした人では、
受け取れる退職金の合計額に差が生まれ、転職経験者のほうが少なくなってしまいます。

もちろん年収アップの転職であれば、年収の増加分で退職金の差分をカバーできるかもしれません。
しかし、もし老後の資産形成を考えるのであれば、転職時に受け取る退職金の使い道を安易に決めてしまうのはおすすめできません
使い道・管理方法をよく考えていきましょう。

ここからは下記3種類の退職金について、具体的な管理方法を説明します。
チェック1. 確定給付企業年金(DB)
チェック2. 企業型確定拠出年金(DC)
チェック3. 退職一時金(次回記事にて解説)

確定給付企業年金(DB)の管理方法

確定給付企業年金(DB)の管理方法
確定給付企業年金(DB)と、次で説明する企業型確定拠出年金(DC)はどちらも企業年金制度の一種です。
企業年金制度は退職金を年金として支給し、毎年受け取れるしくみです。

確定給付企業年金(DB)を採用している会社から転職する場合、資産の取り扱いには下記4種類の選択肢があります。
Check
1. 転職先の確定給付企業年金に移す
Check
2. 企業年金連合会に移す
Check
3. iDeCoに移す
Check
4. 転職前の企業に留め置く
ひとつずつみていきましょう。

1. 転職先の確定給付企業年金に移す

まず転職先の確定給付企業年金制度に移行する方法が考えられますが、あまり現実的ではありません
転職先が確定給付年金制度を採用しているうえで他社からの受け入れ体制がととのっている場合にのみ実現できる方法であり、多くの企業は残念ながら受け入れをおこなっていないためです。

2. 企業年金連合会に移す

次に企業年金連合会に移す方法があげられます。
企業年金連合会は転職者の厚生年金基金や確定給付企業年金を引き受けて運用し、老後に給付する事業を営む組織です。

資産を移すと、その後65歳になるまでの期間に応じた予定利率で年金額が算定されます。なお運用の状況により、年金額が増える場合もあります。
表

3. iDeCoに移す

次に、iDeCoの口座に資産を移して管理する方法です。iDeCoに引き継ぐ注意点は、退職時に資産を現金で受け取らないこと

銀行口座への振込みを指定する書類を記入・提出して資産が銀行へ送金されてしまうとiDeCoには引き継げません。

退職時にはiDeCoに移したい旨を人事担当者等に伝え、適切な手続きをとりましょう。

4. 転職前の企業に留め置く

最後に、資産を転職前の会社に留め置いて60歳以降に受け取る方法です。

もし転職前の会社にて年金受給権がある場合は、そのまま資産を残して60歳(規約により定められた年齢)以降に受け取りを請求すれば年金が支給されます。

一般的には勤続20年を経過すると企業年金を年金で受け取れる権利が発生し、転職による退職後もこの権利は有効となります。

企業型確定拠出年金の管理方法

企業型確定拠出年金の管理方法
企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を積み立てて、運用は社員がみずからおこなうタイプの年金制度です。
転職する際の取り扱いは下記2種類の方法があります。
Check
1. ほかの企業年金に移す
Check
2. 個人型確定拠出年金(iDeCo)に移す
それぞれみていきましょう。

1. ほかの企業年金に移す(ポータビリティ制度を使う)

確定給付企業年金(DB)とは違い、転職先が企業型確定拠出年金制度を採用している場合は資産を転職先の会社に持ち運べます。(「ポータビリティ制度」といいます)

転職先の人事部または総務部に、転職前の会社で確定拠出年金を利用していたことを連絡しましょう。引き継ぎの手続きをおこなってくれます。

2. 個人型確定拠出年金(iDeCo)に移す

転職先の会社が企業型確定拠出年金制度を導入していない場合はiDeCoに資産を移します。

もしiDeCoの口座を持っていない場合でも、退職を機に運営管理機関がiDeCoの口座開設申込みを準備してくれているため、書類を取り寄せて口座を開きましょう。

確定給付企業年金は原則として60歳になるまで給付金を受給できません
たとえ退職する場合でも、です。
したがって必ずほかの企業年金か個人型確定拠出年金(iDeCo)に移管する手続きをとりましょう。

確定給付企業年金(DB)・企業型確定拠出年金は資産を移して継続運用を

退職金制度は長期勤続者が優遇されるため、転職者は金額の面で不利になることが一般的です。

転職して年収が増える方なら年収の増加分で退職金のマイナス分をカバーできるかもしれません。
しかしそれでも老後の資産形成を見据えると、転職時に受け取る退職金の使い道には慎重になるべきです。

確定給付企業年金(DB)と企業型確定拠出年金については移管できる先に資産を引き継ぎ、運用を継続していきましょう。

次回は退職一時金の管理方法を紹介しますので、あわせてぜひ参考にしてくださいね。

弊所では転職時の退職金について、ライフプランを考慮しながら一人ひとりに合った管理方法・使い方をご提案いたします。
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