ストックオプションの権利行使・売却のタイミングは?すぐ売るべき?FPが解説します

2024年9月6日
執筆者:土屋 ごう
ストックオプションの権利行使・売却のタイミングは?すぐ売るべき?FPが解説します
ストックオプションは自社株をあらかじめ決められた価格(権利行使価格)で購入できる権利です。

勤め先でストックオプションが付与されている方は、権利行使や売却のタイミングにお悩みではありませんか。

本記事ではストックオプションの概要・種類を整理するとともに、権利行使や売却の適切なタイミングを解説します。

ストックオプション制度とは

ストックオプション制度とは
ストックオプションは、会社が役員や従業員に対して、自社株を 決められた金額(権利行使価格)期間(権利行使期間)で購入できる「権利」を付与する制度です。

従業員はストックオプションの権利を行使すれば自社株を権利行使価格で購入でき、購入後は売却して利益を得るといった形で資産形成に活用します。

ストックオプションは大きく無償ストックオプションと有償ストックオプションの2種類に分かれます。
それぞれみていきましょう。

無償ストックオプション

無償ストックオプションでは、自社株を購入できる「権利」が従業員に無償で付与されます。

基本的には給与の扱いとなり、税金の扱いの点から大きく3種類に分かれます。
チェック無償税制非適格ストックオプション
無償税制非適格ストックオプションの特徴は 課税のタイミングが2回ある点です。

1回目は権利行使時です。

権利行使価格が権利行使時の株価よりも安かった場合、差額が給与所得として課税対象となります。

● 課税対象となる給与所得=(権利行使時の株価−権利行使価格)×株数

2回目は株式の売却時です。

権利行使価格より高い株価で売却し、利益が出た場合は譲渡所得として課税されます。

チェック無償税制適格ストックオプション
無償税制適格ストックオプションは、税制非適格ストックオプションと異なり、権利行使時の課税がありません

ただし課税が免除される代わりに、権利行使期間について厳しい要件が設けられています。

チェック1円ストックオプション
1円ストックオプションは権利行使価格が1円に設定された無償税制非適格ストックオプションです。

退職金の一種として採用されるケースが多く、給与所得ではなく退職所得として課税される点が特徴です。

有償ストックオプション

有償ストックオプションの特徴は、 ストックオプションそのものを有償で購入する点です。

つまり従業員にとってはストックオプションの購入・権利行使による自社株の購入と、お金を支払うタイミングが2回あります。

ただしストックオプションを有償で取得するため、権利行使時に課税されない点が無償ストックオプションとは異なります。

最後に、無償ストックオプション・有償ストックオプションの特徴を簡単にまとめておきましょう。
表

ストックオプションの権利を行使するタイミング

ストックオプションの権利を行使するタイミング
ストックオプションは一般的に 権利行使期間が設定されているため、期間内に行使しましょう。

裏返せば、権利行使期間内であればいつ権利行使してもかまいません。

また無償税制適格ストックオプションについては、ストックオプションの付与から2年以上経過してからでなければ権利行使できないと法律で定められています。

ただし、あたり前ですが権利行使しなければ売却ができません。

権利行使してすぐに売却できるわけではないため、売却を考えている場合は余裕を持って権利行使しておく必要があります。

ストックオプションの権利行使で得た株を売却するタイミング

ストックオプションの権利行使で得た株を売却するタイミング
権利行使とは違い、売却タイミングに関する取り決めはとくにありません

通常の株式売買と同様に、株価が権利行使価格よりも高いタイミングで売却し、売却益を狙うケースが一般的です。

しかし、FPの立場からみると、できれば 早めの売却をおすすめしたい方もいらっしゃいます。

資産運用をまったくしておらず、お持ちの金融資産が預貯金とストックオプション(自社株)に偏っているようなケースです。

収入源である給料と、自社株の株価はどちらも会社の業績によって上下するため、資産の安全性が会社に大きく依存しているといえます。

このような方は、たとえ自社株の株価が下落しているとしてもリスク分散のために自社株を売却し、世界株式型の投資信託外国債券への乗換をおすすめします。

今後自社の株価の上昇が期待できるなら、売却せず自社株を保有しつづける選択肢もあるでしょう。

しかし金融資産が貯金と自社株のみの場合は、先述のとおり会社に資産の安全性が依存している状態です。

リスクの大きさは頭に入れておきたいところです。
参考記事:お金を貯める・増やす 〜金融商品の知識を身につける 〜高校生のためのマネーリテラシー(パート3)
お金を貯める・増やす 〜金融商品の知識を身につける 〜高校生のためのマネーリテラシー(パート3)
(高校生向け記事ですが、金融商品についてわかりやすく解説しています)
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ストックオプションの権利行使における注意点

ストックオプションの権利行使における注意点
ストックオプションは権利行使によって自社株を購入する点が特徴です。

通常の株式買付のしくみとは大きく異なるため、おもな3つの注意点を押さえておきましょう。

権利行使期間に気をつける

ストックオプション制度では一般的に 権利行使期間が設けられています。

権利行使は義務ではないため無理におこなう必要はありませんが、売却を考えている場合は期間内に権利行使しておきましょう。

なお無償税制適格ストックオプションに関しては、付与後2年〜10年のあいだに行使することと法律で定められています。

退職前に権利行使しておく

退職が近い方や転職をお考えの方は、 退職・転職前に権利行使しておきましょう。

退職するとストックオプションは失効するケースがほとんどです。

とはいえ行使条件は会社によって異なるため、退職後の行使に関して気になる方は会社に確認してくださいね。

権利行使してから売却できるようになるまでタイムラグがある

ストックオプションの権利を行使して自社株を購入しても、すぐ売却できるわけではありません

権利行使後には、勤め先や証券会社を通じた手続きが発生するためです。

証券会社にもよりますが、少なくとも1週間〜2週間程度はみておいたほうがよいでしょう。

ストックオプションは資産状況をみて権利行使・売却しよう

ストックオプションは資産状況をみて権利行使・売却しよう
最後に、本記事の要点を簡単におさらいしておきましょう。

@ ストックオプション制度とは、自社株を特定の価格で購入できる「 権利」を役員・従業員に付与する制度

A ストックオプションの権利行使は権利行使期間内ならいつでも可能。
 売却を考えているなら早めに権利行使しておくと安心

B ストックオプションで得た自社株の売却もいつでも可能。
 保有資産が預貯金と自社株のみの方は売却して投資信託や外国債券への乗換がおすすめ。



株価はつねに変動しているため、ストックオプションで得た自社株の継続保有 / 売却の判断はなかなか難しいかもしれません。

ご自身の金融資産の内訳や今後のライフプランが売却を判断するヒントとなります。

弊所では家計全体の金融資産やご希望のライフプランを考慮した資産形成のご相談にもご対応しております。

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