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持株会で買った自社株を売却する適切なタイミングをFPが解説します

2024年9月13日
執筆者:土屋 ごう
  • 持株会で買った自社株を売却する適切なタイミングをFPが解説します
先日、勤務先で持株会を利用している方から「自社株を売るべきなのか、売るならタイミングはいつがよいのか…」といったご質問が寄せられました。

持株会は給与天引きで自社株を購入するしくみです。

とくに意識することなくほったらかしになっている方もいらっしゃるかもしれませんが、人によっては売却したほうがよいケースもみられます。

本記事は持株会で自社株を購入している方のために、持株会の退会や売却のタイミング、注意点を解説します。

持株会とは

  • 持ち株会とは
持株会は会社の従業員が自社株の取得を目的に運営する組織です。

毎月の給与やボーナスから自社株の購入費用(一定額)が天引きされ、自社株を購入できるしくみです。

持株制度は上場企業だけでなく非上場企業でも運営でき、多くの会社において福利厚生の一環として導入されています。

ここからは従業員が持株会に参加するメリットとデメリットをみていきましょう。

持株会に参加するメリット

持株会で自社株を購入するおもなメリットは、会社からの奨励金と、株を少額から購入できる点の2つです。
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    会社から奨励金が上乗せされる
    従業員が持株制度において自社株を購入する場合、購入費用は先述のとおり給与やボーナスから天引きされます。

    そこに会社が 奨励金として一定割合の金額を上乗せしてくれる点がひとつ目のメリットです。

    会社が奨励金を上乗せしてくれるぶん多くの株数を購入できます。
    保有株数が多いほど受け取れる配当金も多くなります。

    持株会を実施する会社のほとんどが奨励金制度を採用しており、上乗せ率は5%〜10%に設定するところが多くみられます。

    ※実は奨励金も給与同じように給与所得として課税されています

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    株式を少額から購入できる
    ふたつ目のメリットは株式を少額からでも購入できる点です。

    証券会社を通じて株式を購入する通常の取引では100株が1単元と決められているため、株価が高いほど購入にまとまった金額を必要とします。

    たとえばユニクロでおなじみのファーストリテイリングの株価は2024年8月29日時点で46,510円です。

    100株購入するとなると460万円以上の資金が必要となり、なかなか大きな金額がかかってしまいます。

    一方、持株会では1株から購入できるため、負担の少ない範囲で自社株を購入できます。
    なお、最低拠出額は1,000円〜数千円程度が一般的です。

持株会に参加するデメリット

通常の株式投資とは異なるメリットがある反面、デメリットもあります。

売却に時間と手間がかかる点と、会社の業績悪化リスクの大きく2点です。
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    売却に時間と手間がかかる
    持株会で購入した株式を売却するには、通常の株式投資よりも多くの時間と手間がかかります。

    先述したように、通常、株式の売買は100株単位でおこなわれるためです。

    100株未満の株式を現金化するには特別な手続きを要します。

    手続きにも時間がかかりますから、株式市場が開いている時間ならいつでも売却できる通常の株取引のようなスピーディな売却はできません

    自社株を1株から購入できる点は持株会のメリットでもありますが、売却時にはデメリットとなってしまいます。

    また、株式には『インサイダー取引』の規制があります。

    『インサイダー取引』とは企業の内部情報に接する立場にある人が、会社の経営・財務等の重要な内部情報を知り、その情報が公表される前にこの会社の株式等の取引を行うことをいいます。

    このため、決算前や業績発表前など売却できない期間があります。

    会社によっては売却できる期間の方が少なかったり、売却前に上司や担当部署の承認が必要だったりで、スムーズに売却できない場合があります。

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    会社が業績悪化した際のリスクが大きい
    持株会のデメリットとして強く意識しておきたい点が、会社の業績悪化時のリスクです。

    自社の業績が悪化すれば自社株の株価は下落する可能性が高く、保有している自社株も損失を被るかもしれません。

    それだけではなく、経営状態の悪化によって給与やボーナスも減少するリスクがあります。

    持株会は収入と資産のいずれも会社に依存する形となる点は必ず頭に入れておきたいところです。

持株会で買った自社株を売るタイミング

  • 持株会で買った自社株を売るタイミング
持株会で購入した自社株を売却するには、まず持株会からの退会が必要です。

ここでは、退会のタイミングと売却のタイミングの2点についてみていきましょう。

退会のタイミング

持株会を退会するタイミングとしては、 転職・退職時と、金融資産のバランスを考えて自社株を手放す判断をしたときの大きく2パターンがあります。
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    転職または退職するとき
    転職で会社を辞める際も含め、 退職時には持株会から退会することになります。

    この場合、会社の退職手続きの一環として持株会の退会手続きもおこなうケースが一般的です。

    また、退職後も自社株を管理するために個人の証券口座を開設し、保有している自社株を証券口座に振り替える手続きも必要です。

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    金融資産全体のバランスをみて売却を判断したとき
    退職のタイミングでなくても、金融資産全体のバランスを考えて自社株を手放す判断をしたときには、売却のために退会することになります。

    持株会のデメリットにもあげたように「勤務先の業績が悪化した際、受けるダメージの大きい方」は自社株の売却をおすすめします。

    たとえば、金融資産が預貯金と自社株のみの方は自社株を手放したほうが無難といえるでしょう。

    安定して資産を形成するためには「資産の分散」が鉄則です。

    会社への依存度を下げ、第一歩としては全世界株式型の投資信託外国債券への切り替えをおすすめします。

売却のタイミング

今度は自社株を売却するタイミングをみていきましょう。

おおむね、退会してすぐに売却するか、株価の上昇を待って売却するかの2パターンに分かれます。
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    持株会の退会後すみやかに売却する
    保有資産全体のバランスを見直す目的の方は、持株会の退会後すみやかに売却し、投資信託や外国債券など購入予定の商品へと切り替えたほうがよいでしょう。

    もしくは、残念な話にはなってしまいますが、自社株の株価上昇が期待できない場合も売却をおすすめします。

    売却代金を預貯金としてプールしておくか、ほかの金融商品に切り替えるかは、家計の状況やライフプランを考慮して判断します。

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    株価の上昇を待って売却する
    本来であれば、株価が上昇して利益を得られる状態での売却が好ましいことはいうまでもありません。

    しかしこの場合は「売りどき」を逃しやすい点が難しいところです。

    株価が上昇を続けている状況では「もっと上がるかもしれない」と欲が出てしまうためです。

    「◯円になったら必ず売却する!」と心に決めて実行できる方なら問題ありませんが、自信がなければタイミングを待たず、早めに売却してもよいでしょう

    なお、繰り返しになりますが、金融資産の見直しが目的の方はタイミングを待たずすぐに売却してくださいね。

持株会で買った自社株を売却する際の注意点

  • 持株会で買った自社株を売却する際の注意点
これまでにふれてきた項目もありますが、持株会で購入した自社株の売却における注意点を簡単に紹介します。

個人口座の開設と株の振替が必要

持株会を退会する際には、 持株会が指定する証券会社での口座開設と、持ち株の振替手続きが必要です。

口座開設の際、口座の種別を「特定口座源泉徴収あり」にしておくと、自社株を売却して利益が出た際に発生する税金が源泉徴収で完了するため便利です。

NISA口座は利用できませんので注意しましょう。

また、持ち株の振替にかかる時間は勤務先の会社によって大きく異なり、1週間から長いところだと1ヵ月以上を要するケースもあるようです。
心配な方はあらかじめ勤務先に確認しておきましょう。

インサイダー取引への注意

前述のように自社株の売買には基本的に インサイダー取引規制が適用され、下手したら刑事罰や課徴金納付命令の対象となります。

「意図せずインサイダー取引に該当してしまった」ということのないよう、じゅうぶんに気をつけましょう。

100株未満の株式は証券口座に振り替えられないおそれ

株式の取引は100株単位が原則です。100株未満の株式は持株会の口座から証券口座への振替ができないおそれがあり、持株会によって取り扱いが異なります。
くわしくは持株会の規約を確認してみましょう。

100株未満の株式を振り替えられない場合は、 現金で精算する方法や、臨時入金のうえ100株になるまで買い増す方法をとるケースが多いようです。

売却益は課税の対象

持株会で購入した自社株を売却して利益が出た場合、 利益に対して20.315%の税金がかかります。

このとき「特定口座・源泉徴収あり」を選んでいれば、確定申告の必要がなく、源泉徴収で納税が完了します。

なお利益計算の基準となる取得価格を知りたい場合は、持株会が発行する「投資等報告書」や「退会(引出)精算書」に記載されている「簿価単価」をチェックしましょう。

持株会の退会・売却は資産のバランスをみて判断しよう

  • 持株会の退会・売却は資産のバランスをみて判断しよう
最後に、本記事の要点を簡単にまとめておきます。

@ 持株会の退会は、転職・退職時または金融資産のリスクが会社に偏りすぎている場合におこなう(保有資産が預貯金と自社株のみの方など)

A 持ち株は退会後すみやかな売却がおすすめ。株価の上昇を待って利益を得られれば好ましいが、相場の状況によって迷いが生じやすく、売りどきを逃しやすい

B 持ち株の売却代金は家計の状況やライフプランを考慮して使い道を決める


持株会は給与天引きで積み立てられていくため、その存在をうっかり忘れてしまいがちなものです。

資産形成においては リスクの分散が原則である一方、給与と資産の両方が会社の業績に依存してしまうデメリットが大きいといえます。

持ち株の売却や、売却代金の使い道は家計の状況や手元の金融資産のバランス、今後のライフプランをみて総合的に判断していきます。

弊所は自社株の取り扱いを含め、ライフプランを考慮した資産形成のご相談にもご対応しております。

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